♪ 成長するということ

お子さんがピアノを続けていくうちには、大なり小なり「やる気の波」といったものを経験することと思います。

 

今回は、その波の中でも「やる気の低下」について考えてみたいと思います。

 

 

「やる気の低下」その最初は、保護者からの自立の時期にやってくるようです。

 

ピアノの習い始めは、生徒さんが小さければ小さいほど保護者の手助けが必要となります。

 

何故なら、ピアノを弾けるようになるために必要とされる事柄が、余りにも多いからです。

 

例えば、それが初歩の初歩といった曲であっても、そこには音を読む、リズムを刻む、指番号通り弾く、それを一定のテンポに乗せる、強弱をつける、といったことが求められます。

 

その上両手奏ともなれば、左右の音のバランスに気を配りながら演奏することも必要です。

 

しかもこれだけのことを、瞬時に理解し実行できなければなりません。

 

そして、習い始めの幼いお子さんにそれを求めるのは、どう考えても無理がありますから、必然的に保護者の関与が必要となるのです。

 

 

?  保護者が関わるレッスンの様子です。

 

その日、先生から受けたレッスン内容を保護者がノートに記す又は覚えるなどして帰宅します。

 

そして、それらを土台に保護者のフォローの元、練習をし課題をクリアします。

 

すると次のレッスンではさらなる課題が与えられますので、それを又お家に持ち帰り練習を積み重ねます。

 

この繰り返しで、少しずつ演奏が向上していきます。

 

又保護者が関わることで練習も習慣化し、お子さんは順調に伸びていきます。?

 

正に親と子と先生による3人4脚状態です。

 

が、この状態がいつまでも続く訳ではありません。

 

いずれ自立の時がやってきます。

 

そのきっかけは、(◯ちゃんも◯年生なのだから、そろそろ私が手を離す時期なのではないだろうか?)という親の思いであったり、傍にいる親の存在に違和感を感じる子の思いであったりします。

 

そしてその時期は、お子さんのタイプ、男女の違い、親子関係によってまちまちとなります。

 

まちまちではありますが、ここが第1次「やる気低下」時期と重なります。

 

それは何故か。

 

お子さんのやる気が起きない時、その原因の大半は、やっていることが分からない、又は不得意というところにあります。

 

今まで隣に座って面倒をみてくれていた親がいないという状態、それはつまりお子さんの本当の理解度が試されるということを意味しています。

 

そしてお子さんが、実はそれ程楽譜を理解できていなかった場合、一人で行う読譜は、そのお子さんにとって太刀打ちできない高い壁となります。

 

人間、少し頑張ればできることにはやる気も出ますが、かなり頑張らなければ出来そうにないことには意欲が湧きません。

 

そしてやる気の低下した状態とは、お子さんの理解度が、今臨んでいる課題に対して、かなり頑張らなければいけないレベルにあるということの現れだと思います。(何と言っても、音がスラスラ読めていないところに原因があると思われます)

 

余談ですが、私の教室では習い始めの頃から新しい音符やリズム、楽語等全てをカード化し、覚えて頂いています。

 

親子で日々覚える作業を繰り返して頂くので、ほとんどのお子さんがスラスラと答えることが出来るようになります。

 

けれど、ここで安心はできません。

 

何故なら、憶えること=理解すること、ではないからです。

 

もちろんドリルなどのフォローもしますが、それすら完全とは言えません。

 

だからこそ「やる気低下」の時期は、何に対して理解が足りないのか、又は何が不得意なのかを発見し、そこを強化する絶好の機会とも言えるのです。

 

もう一度、初歩に立ち返って確実に自立するためのレッスンを行う良いチャンスなのです。

 

そして、そこを見誤って、練習しない=レッスンを続けても意味がない、と結論付けるのは時期尚早なのだと思います。

 

私の経験からも、この時期を上手く乗り越えられたお子さんの殆どが、程度の差こそあれ、自らやる気を持ってピアノと向き合えるようになっています。

 

その中には、コンクールで賞を頂くほどに成長を遂げた生徒さんもいましたし、学年で行われる合唱の伴奏オーデイションを勝ち抜く力をつけた生徒さんも大勢いました。

 

そんな生徒さんであっても、この「やる気低下」時期には、レッスン継続の危機があったのです。(もちろん大した危機もなく過ごす生徒さんも多くいます)

 

そしてその継続の危機は、お子さんというより親御さんの気持ちが挫けたところから生じていたように記憶しています。(真面目に取り組んでいただけにそうなるのでしょう)

 

中には、音符も読める、リズムも分かる、指番号通り弾くことも出来る、なのにそれらをなかなか統合できないお子さんもいます。

 

それを見ている親御さんは、さぞや歯がゆい思いをされていることとお察しします。

 

けれど、お子さんは日々成長し続けています。

 

心も身体も少しずつ進化し、いつまでも同じところに立ち止まってはいない、ということを忘れないでいて頂きたいのです。

 

いつか、思うように弾ける日がやってきます。

 

又自発的にピアノに向かえるようにもなります。

 

私が保護者の皆様に望むこと、それは、長い目でお子様の成長を見守って頂きたいということだけです。

 

そして、これから先迎えるであろう幾多ある大波小波を懸命に乗り越えていくお子様を、そのかたわらで温かく見守り、励まし続けて頂けることを切に願っております。